
突然のスコールに、色鮮やかなインコの群れが慌てて飛び舞う。太陽の光を受けて金色に輝く雨が一直線に降り注ぎ、あたりは急激にけぶっていく。画面全体に描かれている真っ赤な花の木は、熱帯地域に育つホウオウボク。むっとした湿度や、インコの羽音まで感じられそうな作品だ。
確かな観察眼に基づいた花鳥画で画壇での評価を確立しつつあった石崎光瑤(こうよう)は、1916年11月にインドに渡り、約9カ月間滞在した。目的は熱帯の動植物や、古代建築と美術、ヒマラヤの山々を間近に見ること。旅の成果は、その後の作品に色濃く反映された。
帰国翌年の18年、熱帯の密…